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言葉の魔物

ああ、またやってしまった。

言いたいことがあるのに、言いたいように言えない。

伝えたいことがあるのに、口をつぐんでしまう。

その代わりに、心無い言葉や、涙が頬を伝う。

悔しくなる。悲しくなる。

人生で何度そんな場面があっただろう。

語彙力の問題じゃないのだ。

コミュニケーション能力の問題じゃないのだ。


何か、そういう感情的になるときには、魔物が存在する。

そうして言葉を、考えを、ちょっと尖らせてしまう。

いつもの自分とは違う何かが、私を操ってしまう。


そんなのは言い訳だ、と思うかもしれないが、それができる人はきっと、もう魔物を倒したか、支配下に置いているのか、すでに達成した人なのだ。


だからまだ冒険の途中にいる人には簡単なことではない。まだ武器も揃っていない、武器の使い方さえわからないところに、魔物が急に現れて、襲いかかってくる。

そうなったら、走って逃げるか、攻撃に対して、ただ盾を構えることしかできない。それが、自分が死なないためにできる、せめてもの所作である。


私たちは、そんな冒険の中でたくさんの魔物と出会う。

最初は逃げてばかりでも、何かを達成するために進み続ければ、少しずつ倒せる魔物が増えてくる。

そして途中で、愛と勇気という仲間を見つける。自分を回復させる便利な道具も増えてくる。


もちろん、できるだけ魔物に出会わないように、避けて生きることもできないことはない。

しかしそれではレベルアップしないまま、使える武器が限られるだけじゃなく、武器や道具をしまうバッグの容量も増えない。

そして最後の目的地に待っている魔物に挑むことさえできない。


自分の中の魔物をどう倒すか。


あなた自身は弱いかもしれない。 でも、少しずつ自分に合った武器を見つけていくしかない。何度か負けても、使い方が下手でも、それでいい。

傷を負った分だけ、回復の仕方も覚える。


そうして、次に魔物が現れたときには、少しだけ冷静に構えられるかもしれない。

そう、これはきっと冒険の途中。

今日もまどろみの中で、私はまた小さな魔物に出会った。

そしてまた、小さな一歩を踏み出す。


今日も読んでいただきありがとうございます。

またまどろみの中で会いましょう。

 
 
 

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