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Silent Love

つい昨日、ノベライズの『Silent Love』と映画『サイレントラブ』を立て続けに読み、観たのでたまに考察というか、そんな感じのものをしてみる。まあ、サイレントラブは何か大きな伏線があったり、あまり難しく考える映画ではないので、単純に感動するラブストーリーとして観れば十分だと思う。

※はじめに言っておくが、これはガッツリネタバレを含む内容なので、その点はご了承願いたい。


基本的にはロミジュリのような王道なつくりをしていて、話せない青年と見えない少女という何とももどかしい設定の二人が互いに惹かれ合う物語である。しかし、とはいっても、何か異様さ____少し物語が破綻するとしても作者がどうしても外したくなかったように思える部分が一つある。


それが「匂い」だ。

美夏と北村が拉致される時に、チンピラに髪や服の匂いを嗅がれる。そしてチンピラは、食洗機で頭を洗っていたと自分の貧乏話をする。あのシーンだけどこかおかしいというか、あの場面で匂いに反応することがどこか異様だ。


この映画では全体として裕福で音楽の道に進む美夏と北村と、貧乏で喧嘩をして自分を守ってきた蒼や圭介たちの住む世界が違うということが描かれている。蒼は、美夏が住む世界の音楽大学で働き、ラスト美夏は蒼の住む現場という世界へ足を運ぶ。その交わる場所が旧講堂でもあった。


そしてこの見えない「匂い」が住む世界を分け隔てる。そんな風に描かれている。この匂いの描き方はどこか「パラサイト 半地下の家族」を彷彿とさせるようでもある。あの映画でも、富豪の家族は匂いに敏感で、それが隠せない貧乏人とお金持ちの違いを描いていた。


しかし、今回は逆に貧乏な方が匂いに敏感なのである。これはある意味リアルというか、人間の劣等感のようなものを表現なのだろう。それに対し、北村と美夏はそれぞれ違うシーンで泥水の中に入り、貧乏人たちの世界に踏み込む。


なぜ匂いかと問われれば、それは美夏は目が見えず、蒼は声を発することができないからだ。だから、彼らが持つコミュニケーションは触れ合うこと。そしてもう一つ、映画では直接的に映すことができない、匂いである。よく匂いで互いの相性の良さがわかるというが、美夏は映画の中で一度も蒼へ匂いへの不快感を示さなかった。しかし、よく考えれば触れ合える距離感の中で、匂いは絶対に感じていたはずだ。だからそのこと自体が暮らしの裕福さや住む世界の違いのような境界がないということを、感覚として伝えていたのかもしれない。


最近は4D映画で触覚に近い感覚が再現されている。

匂いまで再現する時代が来るのか楽しみだ。







 
 
 

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