移動
- 政美 森田
- 6月3日
- 読了時間: 2分
もともと歩くのは好きなほうなのだが、最近、よく歩く習慣を作っている。歩いて30分くらいの場所であれば、出来るだけ歩くようにしている。家の近くを歩くだけでも、見渡してみると、変化や発見が多くある。
これは、歩くことが良い、というだけでなく、移動がどんどんと便利になると、人はどんどんとつまらなくなっていく、とも言えるのかもしれない。
きっと、今よりも移動が発達していなかったときの人たちは、自分の家の周りのことをよく知っていた。スマホもない時代の移動中は、本を読むか、周りを見渡すしかない。近所にはどんなお店があって、どんな人が住んでいて、どんな景色が広がっているか。毎日見ていると、新しくできたお店や、工事の進み具合などの変化にも気がつくようになる。
しかし今は、こうした土地に関する情報の差はどんどんと均一化していく。それは、情報が簡単に得られるということのほかに、移動が便利になることで、その道中をすっ飛ばして、目的の場所に辿り着くことができるからである。それから、人々が集まるところが人々の目的地になっていく。道中にあるかもしれない発見や気づきを無視しながら、自分の目的地の情報だけが蓄積されていく。
人々はそんなふうに、自分の住む地域というアイデンティティを失いつつある。
人が遠くへ行くのは、自分のいる場所がつまらないと感じているからなのかもしれない。移動の速さによって、その道にあったはずの情報が遮断され、目的地の情報だけが蓄積される。そこを経て、探究心や刺激を求め、より遠く、より遠くへと移動していく。
あなたはあなたの住んでいる場所をよく知っているだろうか。
もしかすると、世界を一周するよりも、自分の家の周りをまず一周して、あなたの住む地域を知ることのほうが、あなた自身やあなたの世界をより面白いものにしてくれるかもしれない。
今日も読んでくれてありがとうございます。
暖かくなってきたこの季節、帰り道の人は少し歩いてみるのもいいかもしれませんね。
また、まどろみの中で会いましょう。







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